リライトに心がけたこと ・極力付け加えない。削るのみ。 ・文章内に文章が存在すると判断した場合、文章ごとに分けた。 ・一部の漢字とひらがなを逆変換。 ===============  春の訪れは何処に吹いているのか。今日も肌寒い風が吹く。 今年は暖冬だったと散々ニュースで報道されたが、圧倒的な冷え性に毎日を悩む彼女にとっては昼のワイドショーで騒いでいるどこかのアイドルのスキャンダルように、微塵も役に立たない情報だ。学校の成績に乏しい彼女でも意味がないということくらいはわかる。 「はあ」  彼女はこざっぱりとした机の上にペンを放り投げた。天井の蛍光灯が消された真夜中の自室、スタンドライトが彼女を視界だけを照らす薄暗い部屋の中で、深刻そうな顔つきでため息をつく。  彼女のノートには年頃としては不釣合いの文字でメモを取るように、いくつもの言葉が乱雑に散らばっていた。曰く――春のそよ風を切る真っ白な自転車。どこまでもつづく緑の田園。淡い、恋!――  もう一度ため息をついた。背を曲げてうなだれると、彼女の背筋がバキボキと音を立てる。灯油ストーブは冬を打ち倒す意気込みでギラギラと部屋を熱していた。それでも群を抜く寒がりの彼女は、冷え性特有の青白い唇を強張らせ、書き散らしたノートを眺めていた。  空は晴れていた。港の埠頭の水平線から白い太陽が昇り始め、彼女の部屋の窓から目線に広がる低い空はピンクパールの霞に包まれていく。静まり返った街並は、昼間の鬱陶しい人ごみに苛立ち、平凡な毎日に飽き飽きしていた彼女を和ませ、束の間の感傷に浸らせた。浸った彼女の夢想は止まることを知らず、ノートに彼女の夢の足跡が刻まれていく。  ――ひばりのさえずりがやわらかい風に乗ってやってくる、春の目覚め―― 三度のため息のあと、両腕を枕に夢が描かれたノートの上で静かに顔を伏せた。窓の外でバイクの排気音が響き、玄関の前でエンジンが止まるのを耳にしながら、夜更かしで力尽きた彼女はそのまま深い眠りについた。 =============== ☆ 星以降は手を入れる理由は特にないと思いましたが、 <<冬の終わりを告げる最後の枯れ葉に気づく。>> は、 <<冬の終わりを告げる最初の芽吹きに気づく。>> のほうがいいんじゃないかな? かな?